年度末に発生した課題として、これも残っていました。結構経ったのと背景が色々とありますので、復習から入ります。3月2日に開催された第7回肝炎対策推進協議会で、このようなやり取りがありました。
関連過去エントリ
第7回肝炎対策推進協議会(2012/3/26)
第7回肝炎対策推進協議会(議事録)(2012/4/9)
○木村委員
それと、今までガイドラインでは35歳を境にというのがありましたけれども、先ほど35歳以上でも効果がある程度見られる場合もあるという発表がありましたが、今後ガイドラインを変更する予定はあるのですか。
○林会長
明日、熊田先生のところから発表があるかと思いますが。
例年3月上旬頃に公表されている、治療ガイドラインの話です(昨年の記事リンク)。まず、木村伸一さんの発言にもある「35歳を境にというのがありました」について補足すると、従来から「慢性B型肝炎の治療ガイドライン」には主要な判断材料として年齢がありまして、「35歳未満」と「35歳以上」に二分されています。内容には2009年版でかなり大きな見直しが掛かりましたが、それ以前は概ね「35歳未満は経過観察、35歳以上は核酸アナログ製剤(Entecavir)」となっていました(09年当時の記事リンク)。
一方で、この協議会の資料を見ていただくと(記事再リンク)、C型肝炎については1992年のインターフェロン(IFN)療法(24週)承認以来の経緯が「C型慢性肝炎に対する治癒目的の治療法の進歩」と紹介されています。B型肝炎についてはIFN療法(4週)の効果が相対的に低かったことから、2000年(Lamivudine承認)以降「治癒目的の治療法」ではないと位置付けられる核酸アナログ製剤にシフトしてきた経緯があるわけです。
といった背景をふまえると、昨年9月にB型肝炎にもPeg-IFN療法(48週)が承認された件、即座に医療費助成の対象に追加された件は結構大きな転換点だと思われます。C型肝炎については直後に新薬が承認されまして、相変わらずC型の型落ちにならないと適用されない傾向には納得がいかない面もありますが、この措置自体は重要なイベントだといえるでしょう。
今年のガイドラインにはこうした情勢が反映されるはずなのですが、関係先の動きが観測できません。そこで3年ぶりに「専門医からのリーク」(記事再リンク)を当てにしたものの、今回は「私は出席できませんでしたが、熱心な患者さんが参加され、資料提供してくださいました」だそうです。もはや専門医・患者の単独行動が連携しないと最新の情報は拾えないのでしょうか。
速報:2012年B型慢性肝炎治療ガイドライン(はやさかクリニック)
私は画像のテキスト起こしと、手元の昨年3月版を基準とした変更点の抽出を担当しましょう。画像でも変更点は色変えになっているのですが区切りが怪しいので、こちらで適宜調整します。なお、分量が多いので、変更の無い箇所は一部省きます。
B型慢性肝炎治療ガイドラインの基本指針
(※注:2012年版、このページは旧版との対比なし、強調は元資料のまま)
B型慢性肝炎の治療は、35歳未満はdrug free、最終的にはHBs抗原陰性化を目指してIFN単独治療あるいは核酸アナログ・IFNのsequential療法を基本とする。35歳以上は、HBV DNAの持続的陰性化およびALT値の持続正常化を目指して核酸アナログ製剤(初回核酸アナログ製剤Entecavir、LamivudineおよびEntecavirの耐性症例はLamivudine+Adefovir併用療法)を長期投与あるいは核酸アナログとIFNを使用し、HBs抗原陰性化を目指す。
【IFN・sequential治療とは核酸アナログ治療でHBe抗原が陰性化した(または陰性)症例でdrug freeを目指し、IFNと核酸アナログを1ヵ月間併用後5ヵ月間、あるいは核酸アナログ終了後連続してIFNを24週間(48週間)使用し治療を中断する治療と定義する。】
35歳未満B型慢性肝炎の治療ガイドライン
治療対象は、ALT≧31IU/Lで:
HBe抗原陽性例は、HBV DNA量5 log copies/mL以上、
HBe抗原陰性例は、4 log copies/mL以上
肝硬変では、3 log copies/mL以上
(e抗原陽性・≧ 7 log copies/mL)
①Peg-IFNα2a(48週)またはIFN長期投与(24~48週)
②Sequential療法
②③Entecavir
(e抗原陽性・< 7 log copies/mL)
①Peg-IFNα2a(48週)またはIFN長期投与(24~48週)
②Entecavir
(e抗原陰性・≧ 7 log copies/mL)
①Sequential療法(Entecavir+IFN連続療法)
②Entecavir
(e抗原陰性・< 7 log copies/mL)
①経過観察またはEntecavir
②Peg-IFNα2a(48週)IFN長期投与(24週)
血小板15万未満またはF2以上の進行例には最初からEntecavir
(※注:この行は「e抗原陰性」の枠から表組の外に移動された)
35歳以上B型慢性肝炎の治療ガイドライン
治療対象は、ALT≧31IU/Lで:
HBe抗原陽性例は、HBV DNA量5 log copies/mL以上、
HBe抗原陰性例は、4 log copies/mL以上
肝硬変では、3 log copies/mL以上
(e抗原陽性・≧ 7 log copies/mL)
①Entecavir
②Sequential療法
(e抗原陽性・< 7 log copies/mL)
①Entecavir
②Peg-IFNα2a(48週)またはIFN長期投与(24~48週)
(e抗原陰性・≧ 7 log copies/mL)
①Entecavir
②Peg-IFNα2a(48週)
(e抗原陰性・< 7 log copies/mL)
①Entecavir
②Peg-IFNα2a(48週)IFN長期投与(24~48週)
核酸アナログ製剤治療ガイドライン
(※表には変更が無いため略、注釈のみ追記あり)
1) 持続期間は、6ヵ月を目安とする (※注:HBV DNA量<2.1logの持続期間)
2) VBT: viral breakthrough(HBV DNA量が最低値より1 log copies/mL以上の上昇)
B型慢性肝炎の治療(ガイドラインの補足-1)
1. B型肝炎は、HBV genotypeにより治療効果が異なるため、genotypeを測定して治療法を決定する。特に、genotype A, Bは、35歳以上でもIFNの効果が高率であることから、可能な限りかぎりPeg-IFNα2a(48週間)あるいはIFN(24週間~48週間)を第一選択にすることが望ましい。
2. IFNの投与期間は、24週間を原則とするが、有効症例(HBV DNA低下、ALT値正常化)は、48週間投与が望ましい。
32. IFN在宅自己注射可能な症例は、QOLを考慮して在宅自己注射を推奨する。
43. Lamivudine及びEntecavir耐性株に対しては、Lamivudine+Adefovir併用療法を基本とする。しかし、Lamivudine+Adefovir併用療法を行って3年以上経過してもHBV DNAが4 log copies/mL以上でかつALT値≧31IU/Lの症例はEntecavir+Adefovir併用療法も選択肢のひとつとなる。
54.Lamivudine、Adefovir 、Entecavirのいずれの薬剤にも耐性株が出現した症例に対しては、Entecavir+Adefovir併用療法あるいはTenofovirも選択肢のひとつとなる。
B型慢性肝炎の治療(ガイドラインの補足-2)
(※昨年版では1ページだったが分割された)
65. Sequential療法を行う場合は、核酸アナログ治療でHBe抗原が陰性化(または陰性)症例で核酸アナログを十分投与し、HBV DNAの陰性化期間が1年以上経過し、Core関連抗原(HBcrAg)も4.03.0 Log U/mL以下、HBsAg 1000 IU/mL以下の症例に行うのが望ましい。
76. Adefovir併用療法を長期に行い、腎機能が悪化する症例では、Adefovirは隔日投与にする。
87. 抗ウイルス療法は、ALT値が≧31IU/Lの場合に考慮する。35歳以上でF2以上の進行例にはALT<31IU/Lでもウイルス増殖が持続する症例は抗ウイルス療法の対象となる。しかし、高齢者やHBe抗原陰性例、抗ウイルス剤の投与が難しい例では肝庇護療法(SNMC、UDCA等)で経過をみることも可能である。
9. Lamivudine投与中でHBV DNAが陰性化が持続する場合は原則Entecavirに切り替える。またEntecavirに切り替える際はLamivudineの耐性変異がないことを確認することが望ましい。
108. HIV合併症例は、Entecavirの使用によりHIV耐性ウイルスが出現する可能性があるためEntecavirは原則として使用すべきでない。従ってEntecavir開始時にはインフォームドコンセントを取得した上でHIV抗体の測定を行うことが望ましい。
(※変更が無いため略)
なお、この内容は「免疫抑制で発症するB型肝炎対策ガイドライン」(2011.9.26改訂版)として、日本肝臓学会公式サイトにも掲載されています(参考リンク)。
以上です。補足の3が無くて4になっているのは気になりますが、以前は「Lamivudine投与中…」が補足の後に入っていたための欠番かもしれないのでとりあえず保留としておきます。今回の要点はやはりPeg-IFN対応で、あわせて投与期間のベースが24週から48週に延長されるなどの調整も入っています。
そして3年前と同様、なぜか慢性B型肝炎のガイドラインに大きな見直しが掛かると一般公開が露骨に遅くなるという現象が発生しているようです。今回はC型肝炎のガイドラインも宙に浮いているために困ったことが起きているようです(※なお3年前は、C型肝炎患者に対するIFN72週延長のみガイドライン公開前から一般に周知されていました)。
先に少しだけ取り上げたC型肝炎の新薬はTelaprevir(テラプレビル)製剤で、Peg-IFNα2b+Ribavirinとの3剤併用療法が既に行われています。ただ、注意事項が3つ挙げられています。以下、一部を抜粋します。
1. 重度の貧血の発現する傾向があることから注意を要する
2. 重篤な皮膚障害が発現するおそれがあることから皮膚科医との連携のもとで使用し、これら皮膚障害の発現した場合には3剤すべてを直ちに中止する。
3. 投与初期(1-7日間以内)より尿酸値、及びクレチアニンの上昇する症例が存在することから、尿酸値が異常値になったの場合、早期に高尿酸血症治療剤の投与が必要である。
確か2番は以前から注目されていたと思いますが、どうやら3番はスルーされていた模様で、薬害原告筋からの情報です。
C型肝炎治療新薬「テラビック」で17名に重篤な副作用(古賀克重弁護士ブログ、2012/5/10)
治験から承認、医療費助成という展開が早すぎたような気もします。一方で、主に中高年~高齢者からなるC型肝炎患者が人柱をやってくれていると考えれば評価してもいいかもしれません。








by 渡辺亮
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