前回紹介したのが昨年8月なので(記事リンク)、また半年ほど開いてしまいました。今回はこのシリーズの続きをお届けします。この話題の発端と思われたのは2008年頃の新型インフルエンザワクチン騒動で、一段落した10年頃からは引き続き予防接種制度全般の見直しに関する議論が行われていました。
ところが、なぜかこの議論になって早々(10年4~5月)にパブコメ募集が掛かりまして、その結果は当時展開されていたHPVワクチン(通称:子宮頸がんワクチン)の販促活動に押し切られ(記事リンク)、菅直人首相(当時)の指示もあって(記事リンク)、専門家による情報収集と検討作業をパスしてHPV・Hib・肺炎球菌(小児用)の3ワクチンを対象とする公費接種事業が行われることになりました。
これは前回紹介したように恒久措置にはなっておらず、今年度末で期限切れとなる可能性も一応ありました。ですが、ここまで有名になってしまうと簡単には切れない、いわば既得権とも呼べるものとなっています。延長のための予算措置が今年度の4次補正に入っていましたので、とりあえず来年度は現状維持で継続される模様です。
そんなわけで、一般の報道に出てきたのは不活化ポリオワクチン(IPV)の件と新しいHPVワクチンが投入された件くらいではないかと思われますが、本来は今後の予防接種制度や関連組織、あるいは対象とする疾患(ワクチン)等に関する議論が続いていたのでした。といったあたりが「これまでのあらすじ」になります。
先の議論が行われていた予防接種部会の事務局は健康局結核感染症課、肝炎対策推進室もある健康局(紹介した記事リンク)です。人気投票の結果で公費接種事業が立ち上げられたのと同時期のこと、健康局長が人事異動で交代されました。当時は別件を取り上げていまして(記事リンク)、こちらの方は入っていませんでしたので別記事を貼ります。
【政治】長妻厚労相、子ども手当担当局長を降格、研究職へ 「事実上の左遷人事」(2010/7/23)
http://logsoku.com/thread/tsushima.2ch.net/newsplus/1279854141/
長妻昭厚生労働相は22日、伊岐典子雇用均等・児童家庭局長を独立行政法人労働政策研究・研修機構に出向させ、後任に高井康行医薬食品局長を起用する幹部人事を内定した。伊岐氏は民主党マニフェスト(政権公約)の目玉施策である子ども手当の担当局長。長妻厚労相は同制度導入をめぐり、伊岐氏の対応に不満を持っていたとされる。
伊岐氏は研究職に就く予定。局長経験者の出向先としては異例で、事実上の左遷人事となる。(※略)上田博三健康局長は勇退し、後任に外山千也防衛省衛生監を充てる。(※略)
この直後、10年9月に退任された(記事リンク)長妻昭元厚労相の置き土産でした。当時は子ども手当騒動の方がかなり大きかったため、こちらは特に注目されなかったのではないかと思われます。しかしこの新局長が実は曲者だった模様で、就任直後に開催された肝炎対策推進協議会(内容を紹介した記事リンク)にもこんな形で登場していました。
2010年8月2日 第2回肝炎対策推進協議会(※議事録)
http://www.mhlw.go.jp/stf/shingi/2r9852000000mlor.html
○伯野肝炎対策推進室長
定刻となりましたので、ただいまより「第2回肝炎対策推進協議会」を開催いたします。(※中略)事務局ですが、7月30日付で人事異動等により交代がありましたので、ご紹介させていただきます。外山健康局長です。松岡健康局総務課長です。
○外山健康局長
私は若いころ、いつの間にかB型肝炎ウイルスに感染したことがありますし、針刺し事故であるとか、この間も黄疸でだいぶ苦しんだ経験がありまして、全力で職責を全うしたいと思っております。よろしくお願いいたします。
推測される影響としては、8月26日の協議会(内容を紹介した記事リンク)で示された最初の「基本指針案」には「急性B型肝炎は……性感染症としての認識を促し」といった記述があったのが、委員からの指摘も受けてあっさり修正されました(記事リンク)。草稿を書いた人のその後が結構気になります。
その一方で、ここ1~2年の間にB型肝炎対策に進展がみられたかというと全然そんなこともありませんから、この局長は基本的には私情を挟むことなく公正な対応を取られていたといえるのではないかと思います。といった話もふまえて、予防接種制度の話題に戻ります。この外山局長が最近の報道に登場しました。zakzakなのですが、izaの記事には無いようです。
今度は小宮山大臣!“ウソ答弁”に三原じゅん子が激怒「女性の敵」(zakzak、2012/2/9)
自民党の三原じゅん子参院議員(47)が激怒している。小宮山洋子厚労相(63)が7日の参院予算委員会で、子宮頚(けい)がんのワクチン接種に関する費用負担に関して、堂々と「ウソ答弁」をしていたのだ。(※略)2月8日には、インフルエンザ菌b型と小児用肺炎球菌、子宮頚がんのワクチン接種の臨時特例事業526億円が盛り込まれた第4次補正予算が成立した。
だが、1月27日に厚生科学審議会感染症分科会予防接種部会が、子宮頚がんを個人予防に比重を置いた「2類疾病」に分類した。予防接種法が改正されれば、現在多くの地方自治体で無料とされている子宮頚がんワクチンは有料化され、副反応救済制度による給付金も削られてしまう。(※略)
私は7日の参院予算委員会で、小宮山厚労相にこの件を質問した。小宮山氏は「(子宮頚がんを)2類に分類しても、いまと変わらない保証がちゃんとつく形にしている」と断言した。私が「今のままで、よろしいということか?」と確認すると、小宮山氏は「今のままだ」と再度言い切った。
ところが、翌8日夕方、厚労省の外山千也健康局長らが議員会館の事務所に説明に来て、「救済制度は現行の事業より数段落ちます」と小宮山氏の答弁が間違っていたことを明らかにしたのだ。(※以下略)
予防接種部会をウォッチされている方(かなり少ないと思いますが……)には基本的な話ですが、この従来からの分類「1類疾病」というのは「集団予防目的」「致命率が高い」のいずれかに該当するもの、「2類疾病」はいずれにも該当しないものであり、現行制度で2類に該当するのは「インフルエンザ」のみです。
背景としては、2000年(平成12年)の前回改正時に主に高齢者を対象としてインフルエンザワクチンを接種する目的でこの2類が追加された経緯があるらしく、この2類疾病を編集するには法改正が必要になっています(※1類は政令で追加可能)。なお、検討対象の中でこの構図に近い(主に高齢者に使用される)ワクチンとしては、肺炎球菌(成人用)があります。
部会(および小委員会)で主に検討対象となったワクチンは7種類でした(過去記事リンク)。このうちHib・肺炎球菌(小児用)・水痘・おたふくかぜの4種類は「集団予防効果」が比較的容易に認定される一方で、HPVとB型肝炎は扱いが微妙になります。B型肝炎については部会でも「保育所での集団感染事例」が指摘されたのですが(記事リンク)、無かったことになっています。HPVの集団感染というのは聞いたことがありませんが、どうなのでしょうか。
また、「致命率」という点で罹患者の経緯やワクチンの効果なども検証されていますが、このあたりの情報自体は「HPVワクチンをB型肝炎ワクチンより優先する」動機付けにはならないと思われます。
このあたり、一般に人気の高いHPVワクチンの公費接種を短期間の「期間限定」事業としてあっさり通した上で、法改正も想定される恒久措置化の段階でハシゴを半分くらい外すという作戦は、B型肝炎ワクチンの普及を期待してウォッチしていた患者筋としては、かなり見事なものだと思います(※B型肝炎ワクチンの定期接種化を阻止するのが、かなり難しくなってきています)。さらに詳細を見たいという方には、9月の部会の議事録を参照されることをお勧めします。


by 渡辺亮
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